カマキリ事件

持ち主であろうなおみさんにこれが作り物であることを確かめようと

「よっくできてるねー」

と確かめたところ、「きゃーっ」とか言います。作り物じゃありませんでした。ひーっ。

僕は怖くて結局後部座席に逃げ込んだんですけど、このことを後になって、なおみさんにすごく責められました。

「いざとなったら逃げるんだ？」
「・・・」
「わたしを置いて逃げるんだ？」
「逃げる」



そりゃ逃げます。怖いっすもん。考えてみてください。目の前にあるコーヒーカップが実は生き物だった！ってことと同じことっすからね。びびりますよ、そりゃあ。後部座席に逃げ込むってのも自然でしょ？　やすだを責められないと思うでしょ？　やすだはむしろかっこいいでしょ？

怖い人たちに囲まれたら逃げるかどうかとは同じことじゃなくて、エイリアンが「こんばんはー」って自宅に訪ねてきたときと同様です。こんなんなおみさんをかばおうが何しようが食べられちゃうじゃないですか？　そんなの逃げますよ。置いてきますよ。

文章にするとひどい気がしますけど、実際はみんな逃げますって。まじで。それを正直に僕は言いたい！　みんな逃げる！　エイリアン来たら逃げる！　やすだ、正しい。やすだ、悪くない。やすだ、いいひと。



で、後部座席に逃げ、安全を確保した僕はなおみさんとカマキリの戦いを観察してました。なおみさんはタオルを投げてカマキリを追いやろうと投げるんですけど、それが逆効果で目の前のフロントガラスにカマキリを持ってきていました。はは。

って笑ってられません。きゃー、きゃー、言いながら運転してるので事故りそうです。僕は後ろの席から「車止めな！　危ない！」って言ってたんですけど、なおみさんは「どうにかして！　本当にどうにかして！」って僕を役立たずのように連呼するので（実際に役に立ってない）助手席にしぶしぶ戻り、なおみさんの前にいるカマキリを勇気を出して本当に勇気をだしてタオルでえいっとつかみ、窓の外に捨てました。すんごい怖かったです。でっかいバッタをつかむとき以上に怖かったです。

虫こわい！　絶対こわい！　スターシップトゥルーパーズみたいに昔はでっかい虫にぱくぱく食べられてたに違いないです。だからこんだけ怖いんす！　僕が怖がりなんじゃないっす！　ふつうっす！