ある日彼女は去っていった。僕に何も告げずに突然。それはあまりに突然すぎ、僕にとっては日常から切り離されたできごとだった。でも、確かに現実だった。
ぱむの疾走。
逃走と言うべきか。置き手紙、いや、確か、絵日記と表示されていたはずであるから「置き絵日記」だけを残し彼女は去ってしまった。
これほど、驚かされた朝を僕はこれまで経験したことがなかった。しばらくぼうっとしていたが、既に会社に行かなくてはならない時間になっていた。でも、仕事は手につきそうになかった。
案の定、仕事は手に着かなかった。仕事が一段落してから僕はぱむの送り主にメールを送った。
「ぱむ、いなくなっちゃったよ!」
返事はすぐにはなかった。落ち着こう。僕はプレステを持っていない。だから、この「置き絵日記」を読むことはできない。もう、遅いのだ。手遅れなのだ。
さくらやさんと飲んだときのこと。
「いなくなちゃって以来、やってないっすねー」
「え? あれ、いなくなるんすか?」
だから僕はいなくなるのは知っていたのだ。いつもいなくなる心の準備をしていたはずだった。しかし、この喪失感は予想できなかった。しごとに疲れたとき、何もかも投げ出したくなるとき、ぱむは僕を元気づけてくれた。また、ぱむが石を蹴っていじけてるときは、必ず、慰めるようにしていた。
しかし、いくら思い出にふけってもディスプレイには時間しか表示されていない。しばらくしてから携帯にメールが届いた。
「ぱむがいなくなちゃったんだねっていうかすぐいなくなるんだね!!」
そうさ。すぐいなくなったさ。でも、ぱむと過ごした時間は、僕にとって1ヶ月にも1年にも匹敵する時間だったんだ。
ぱむ、もし、これを読んでいるのなら帰ってきて欲しい。もう一度僕と人間になる道を歩もう。はにゃ〜。