『あのー、あのー、おつりみせてもらえませんか?』
いや、ごめん。もう財布にしまっちゃったんだけど。で、いくら返せばいいの?
『って、あのあのレシート見せてもらえますか?』
えっと、待ってね、あれ携帯震えてる。あ、この震えかた! これはショートメールじゃなくてふつうの電話の着信の震えかただ! どうしよ、どうしよ、でも今でれないし、この彼女は僕が探してるのを赤い顔して真剣に見てるし。あ、しつこくなってる、あ、ってレシート探してるんだよね僕。あー、あった、これですけど。って切れた。あー、怒ってる。絶対とらなかったことを怒られる。どうしよー。
『えっと、こっちとこっちを逆に渡しちゃったんですけど』
あー、えっとお釣りと合計金額を逆に渡しちゃったわけね。って差額は? 143円か。143円でいいんだね。えっと、100円と。あるかな細かいの。って、わ! また携帯震えだしたよ。すごい震えかただよ。怒りに満ちてる感じだよ。どうしよう。でろーこの野郎!って感じの震えかただよ。ってとにかく143円、143円、早く渡せ俺。はい、これでいいんですね。
『どうもありがとうございます。本当にすいませんでした!』
あ、いや、そんなに頭下げなくても。んじゃあね、年下系ふつう学生ちゃ・・・ってもう去ってちゃったよ。はや。そんな脱兎のごとく去らなくてもいいのに。僕と143円の邂逅について語らなくてもいいの? ってぜんぜんいいんだよね。って携帯にでなきゃ。焦って1回切り押したことあるからな。この電話上げボタンだよな。ぴっと。もしもし?