ベンチに座ってなおみさんお手製のサンドイッチを3人で食べている(正確に言うと3人じゃなくて2人と1わけの分からない生き物)。なおみさんは天気のいい日は外に行きたいらしい。僕と@さんはうちでじっとしてるほうが好きなのだが、なおみさんに言われれば従うほかない。
「なおみさんは意外に料理うまいんだね」
「そうかな〜?っていうかそうだよ、うまいよ」
そう開き直られてもなんかいやだなと思った。食べ終わった後、僕らは貞子ちゃんごっこをして遊ぶことにした。そのためにずらも買った。じゃんけんぽん。ってことでなおみさんの負け。なおみさんがずらをすることになった。
「んじゃ、10数えたらね」
@さんはきゃーきゃー言いながら走り去った。楽しんでるみたいだ。良かった。僕は近くの植え込みの中に隠れることにした。しばらくすると、髪を前に垂らし肩を上下させてぎこちなく歩いてくるなおみさんを発見。植え込みのそばを通り過ぎる。まじでこわい。リアリティありすぎる。かさっ。わ、やば。音立てちゃった。なおみさんはこちらの方向を向いた。近寄ってくる。
「わっわわわわわわ」
僕はそこから1歩も動けずなおみさんに捕まった。今度は2人で貞子ちゃんをやる。そのためにずらも2つ用意してきた。僕もなおみさんほどじゃないけど貞子ちゃんの動きをまねて公園内をうろつきまわった。犬の散歩に来ていたおじいさんが奇異の目で僕となおみさんを見ていたけど、かまいはしない。僕らは楽しんでる。
10分近く、何も言わず2人の貞子は公園内を彷徨い歩いた。が、@さんを見つけることができなかった。あれ〜、おかしいな〜、@さん小さいからな〜。そのとき背中にいやな感覚が走った。頭は気付いていないけど躰が先に感じるときになるあの感覚だ。@さん?@さん?
「う、うわ〜!」
@さんの叫び声が公園に響く。@さん!!僕はとにかくその声の方向に走った(ずらはしたまま)。鳩の群の中からだ。僕は鳩の群に走り寄った。
「鳩!!鳩やめろ!!」
僕は叫んだ。何羽かの鳩は僕の声に驚き、まわりに散ったが、まだ@さんは見えない。どこにいるんだ、@さん。
「@さん!!」
@さんは頭を抱えしゃがみこんだまま小さくなっていた。実際的に小さくなっていた。僕は@さんの腕をつかみ鳩の群から拾い上げた。
「やすだくん・・・こわかった、こわかったよ」
@さんはそう言って僕にぺしっと抱きついてきた。@さん、ごめん、もっと早く@さんを探すべきだった。ぎこちなく躰を上下させて歩いてる場合じゃなかった。もう今度からは@さんに寂しい思いをさせない。
なおみさんは相変わらずの貞子歩きで僕らに近づいてきた。
「@さん捕まっちゃったねー。よーし、もう一勝負〜」
「・・・」
「あれ〜、もう貞子ちゃんごっこ飽きちゃったの? んじゃ次は歌の時間。まずなおみから。最近作った「ぬくいぜ!ばばシャツ!」歌いまーす! ばばばばばばばばん、ばばシャツー、スリー、フォー、ばばばばばばばばん、ばばシャツー、スリー、フォー、俺のばばシャツ超合金」
何が超合金だよ。@さんと僕はそう思った。