今日は@さんを誘ってあてもなくドライブ。
「やすだくん、運転へたくそだね」
「へたくそです」
なんでお前にそんなこと言われなきゃいけないんだよ!なんて一度怒鳴ってみたいけど、@さんは僕のかけがえのない友だちなのだ。そんなこと言えない。
「@さんシートベルト苦しくないですか?」
「んん、ちょっとね」
@さんは小さいのでシートベルトに挟まれてる小汚い荷物に見えた。でも、そんなこと言えない。僕にとって@さんはかけがえのない小汚い荷物なのだ。
「この辺くると、やっぱ空気がおいしいですよねー、窓開けていいですか?」
「いやだ」
「・・・」
生意気な生物だなと思った。この生意気な生物であるところの@さんは何のためにこうして存在してるんだろう? でも、そう思うだけでやっぱり口にはだせない。@さんは僕にとってかけがえのない@さんなのだ。
「うわー、あの建物なんですかね? って@さん前見えないですね」
「見えない・・・」
@さんは小さいのでフロントガラスから前が見えない。だからドライブ途中は宙を見据えたり、僕の顔をじっと眺めたりする。純粋に気持ち悪い。
「ちょっと伸びるね」
「え? なんすか?」
運転に集中していたのだが、助手席で何かが伸びた。僕のかろうじて入る視界の左隅で@さんはどんどんと伸びっていった。
「わ! なんすか! それ!」
「え? 伸びてるんだけど。あー、これで見れるー。あー、あの建物、ゴミ処理場じゃない?」
ってそんなことどうでもいいよ! なんで躰伸びるんだよ! 気持ちわりーよ!
「・・・@さんって、べ、便利そうな躰してるんですね」
「便利そうな躰っていうか、そういうものだから」
ハンドルが冷や汗でぬるぬるしてる。こいつとんでもない生き物なんじゃないか?
この日別れるまでずっと@さんの躰は伸びたままだった。不可逆なのだろうか。そうだったら面白いけど。