@さんを僕のうちに招いてみた。
「やすだくんのうちなんか臭いね」
「あー、なんかが腐ってるんですよ」
「ふーん、死体?」
「まー、ある意味死体ですね」
@さんはちょこまかちょこまか部屋の中を歩き回った。@さんは小さい。
「でも、いいの? 女の子とか来ないんじゃない、これじゃ」
「来ませんね、その兆候も、伏線も、匂いも、面影も、予感も何もないですね」
「いやなこと訊いちゃった?」
「別にいやなことじゃないです、ふつうです」
「ふつう」
@さんは炊飯器のそばに行って開閉ボタンをカチカチと押した。
「あれ、ごはんとか炊くの?」
「炊きますよ、ごはんくらい」
「ふーん」
僕は何か@さんを見ていてこの炊飯器に閉じこめてみたくなってきてしょうがなくなってきてしまった。
「なに?」
「いやー、@さんって見てると飽きないなって思って」
うそをついた。
「これですよね。@さんが見たいって言ってたヴィデオって」
「観よう観よう」
「ええ、ここで観るんですか。借りていってくださいよ」
「いいじゃん、一緒に観ようよ」
「僕、いやなんですよ、むらむらしちゃうときに隣に男とか居ると」
「いいじゃん、いいじゃん」
「やですよ、やっぱ」
「いいじゃーーん」
「やなんです!」
「いいじゃん!」
「もう! 炊飯器で炊くぞコノヤロウ!!」
沈黙。@さんは驚きの顔で僕を見て、炊飯器を見て、そして僕を見た。
「帰る」
@さんは部屋を出ていってしまった。
でも@さんはちゃっかりヴィデオを借りていった(まだ返してもらってない)。